#7-2 11月23日は柚子の日。その風味を楽しむ

“いいふうみ”にちなみ、11月23日は柚子記念日。黄色く熟した柚子が、スーパーの売り場でも多く見られます。その柚子の風味をおいしく味わう方法を「マダムゆず」の異名を持つ、食のコーディネーター神谷禎恵さんにうかがいます。

yohaku コラム 「桃栗3年柿8年 柚子の大馬鹿18年」と江戸時代のカルタ札で読まれたほど、実をつけるまでに長い時間がかかる柚子。その強烈なトゲと鮮烈な青い香りから邪気を祓うものとされてきました。冬至に柚子湯に入るのもその名残です。

yohaku コラム柚子は5~6月頃に可憐な白い花を咲かせます。9月に実がなり、その中から摘果(果実を間引きすること)した実は青柚子として流通します。残された柚子が熟して、黄柚子として11月に収穫されます。

――神谷さんが、「マダムゆず」と呼ばれるようになったのはどうしてでしょうか?

母が1997年に、地域に根づいた料理を研究するため台所だけの建物「生活工房とうがらし」を設立しました。母は、高校で家庭科を教えていましたし、祖母は食にこだわりがありました。私は母や祖母の影響もあり、「食」に関わるようになり、「生活工房とうがらし」を受け継いて、食文化の伝承料理を伝える活動を行っています。私の出身地である大分県宇佐市は、柚子の一大産地。2008年、大分県庁やJA大分などと一緒に「ゆずプロジェクト」を発足し、柚子の魅力を発信してきたんです。柚子の取材に現地に来てくれていたフランス人シェフが、私の活動や、柚子胡椒にちなんだ緑色の車やバッグ、ネイルを見て「マダムゆずだね」と名付けてくれたんです。

――柚子というと黄色いイメージでした。神谷さんのイメージカラーは、青柚子のほうなんですね。青柚子と黄柚子の違いはなんでしょうか?

摘果された青柚子の旬は9月の1カ月間だけ。まだ色づく前で、青々としていますよね。表面にハリがあり、少し皮に傷をつけるだけでもフレッシュな香りの粒が飛び散る感じです。次第に色づいて、緑色から黄緑色になり、レモン色になり、黄色になってきます。そんな黄色の柚子は、皮と実の間に隙間ができて弾力がつきます。中も完熟し、少し香りも果実も甘くなっているんですよ。

――それぞれの時期の特徴、よさがあるんですね。皮も果実も種ですら利用できて捨てるところがない柚子。神谷さんが一番、その風味を味わえる、と思う方法はなんですか?

柚子胡椒ですね。皮が持つ風味が一番まっすぐに味わえます。私がワークショップでお伝えしている青柚子の柚子胡椒。その香りが格別で色あざやかなのは作りたての3時間以内なんです。

――3時間!? 3ヶ月ではなくですか?

そう、3時間です。レタスなんかもそうですよね。葉緑素が破壊されていくので時間が経つと色が変わったり、ヘナヘナになったりますよね。柚子胡椒は、長期保存が効く調味料ですが、できたてのフレッシュなものには、柚子の鮮烈な風味、特別なおいしさがあるんです。それをあつあつのごはんにのせて食べてみてほしいです。柚子胡椒の印象が変わると思います

yohaku アロマドーム 神谷さんのおすすめの柚子の味わい方は、手作りの柚子胡椒をごはんと一緒に食べること。「炊き立てのごはんやおにぎりと合わせたり、メレンゲにした白身と卵黄をごはんにのせて、作りたての柚子胡椒でいただく卵かけごはんも絶品です」

――これは、手作りでしか味わえない風味ですね。

青柚子の短い旬のときにしか味わえませんね。四季の移ろいや自然の美しさを柚子胡椒のその先に感じてね、とワークショップではお話ししています。

今の時期だと、黄柚子が手に入りますよね。柚子農家さんと出会ったころ聞いたのが、柚子の皮を剥いてお醤油をつけ、これをごはんのおともにすること。柚子の皮とごはん!?と驚いたのですが、とても相性がいいんです。青柚子、黄柚子。どちらも旬の時期は限られているので、試してみてくださいね。

yohaku アロマドーム 神谷さんおすすめの柚子胡椒の作り方は、青柚子の皮……約5個分、青唐辛子(ヘタをとり、縦半分に切り、種を取り除く)……約5本分、塩……青柚子皮と青唐辛子の正味16~18%を用意します。柚子の皮と塩、唐辛子と塩をそれぞれ分けてフードプロセッサーですり潰してから、すり鉢ですり合わせながら混ぜて完成。すり鉢を使うことで香りが引き立ち、舌ざわりも滑らかに。

Profile

Yohaku 神谷禎恵 Yoshie Kamiya

神谷禎恵 Yoshie Kamiya
株式会社生活工房とうがらし代表取締役。大分県宇佐市に生まれ、大分大学と日本女子大学で教育学を学び、3人の子育てをしながら中村学園大学大学院にて人間発達学修士を取得。台所だけの建物「生活工房とうがらし」を拠点に、食を伝える活動を展開。調味料ソムリエプロとしても活動。「ごはんはエール」をテーマに、「百年先まで続くしあわせの食卓の風景」をめざしている。現在、「にぎりびと」としておにぎりを握りながら、お米のすばらしさを伝えるライスツーリズムに力を注いでいる。

インタビュー・文: 柳澤智子(柳に風)
撮影:水崎浩志(ループフォトクリエイティブ)
場所:和多屋別荘